2023-12-02

Twitter から Mastodon に移住して 9 ヶ月が経った

この記事は Fediverse (2) Advent Calendar 2023 の 2 日目の記事です。
昨日の記事は、TOCATTI さんの ルノー トゥインゴGTを買った – Telegraph でした。


こんにちは、Fohte (ふぉーて) (@[email protected]) です。

Mastodon に住み着いてから 9 ヶ月ほどが経ちました。いまはおひとり様サーバーにいて、隠居のように Fediverse 空間を過ごしています。

今回は「なぜ Mastodon に移住したか」「移住してどうだったのか」を中心に書きます。

Twitter → Mastodon になぜ移住したのか

Twitter から移住するきっかけ

今年 1/13 に、予告なく突如として Twitter のサードパーティークライアントの締め出しが行われました。

この影響で、筆者が愛用していたサードパーティークライアントである Tweetbot が使えなくなりました。

Tweetbot はリリース当初から使っていて、愛着がとてもあるアプリです。
UI/UX が非常に洗練されていて、とにかく手に馴染むところがとても好きです。Tweetbot を離れ別のクライアントを試した時期もありましたが、結局すぐ Tweetbot に戻っていました。

Twitter がサードパーティークライアントを締め出すより前に、タイムラインを読み込む API の rate limit が厳しくなったときもありました。
そのタイミングで Twitter 公式クライアント (Twitter Web、Twitter for iOS) も使おうと試みたことはあります。ただ、Tweetbot と比べるとどうしても UI/UX の面で馴染めずにいました。
また、トレンドや広告、For You など、自分にとって不要な情報が多く、フォロイーのタイムラインを見たいだけの自分には合いませんでした。

既読管理がないところも大変につらかった点です。
自分の場合、タイムラインをまだ読んでいないものから 旧 → 新 の順番でくまなく読んでいく、という使い方をしていました。
既読管理がないと 新 → 旧 の順で見ることになり、またどこまで読んだのか網羅性も欠けてしまいます。ここが自分の使い方に合わず厳しかった点です。

ということで「Twitter 公式クライアントに馴染めなかった」ことが、Twitter から移住した最大の理由です。1

なぜ Mastodon なのか

筆者が Twitter からの移住を検討していたのは、前述のように締め出しが行われたあと、つまり今年 2 月頃です。
その頃は misskey.io や Bluesky の存在を認知しておらず、Mastodon だけは 2017 年頃にブームが起きたときに認知していました。そこで Mastodon は Twitter のように使えるということは認識していました。
改めて使ってみると「やはり Twitter と同じように使えるし、Twitter のような中央集権ではない」というところに筋の良さを感じ、Mastodon に移住し始めました。

また、ちょうど移住を検討し始めたあたりで、Tweetbot の開発元である Tapbots が、Tweetbot の後継となる Mastodon クライアント Ivory をリリースしました。
前述のように筆者は Tweetbot がとても好きなので、これだけでも Mastodon へ移住する強いきっかけになりました。

移住し定住できた理由

Mastodon に独り身で移住しても、フォロイーやフォロワーはなかなか増えません。人とゆるく繋がることが SNS の面白い点のひとつで、人が見つからないと定住する動機がないと感じています。
Twitter のフォロイーやフォロワーをそのまま Mastodon ないしは Fediverse へ一斉に移住できるのが理想ではありますが、現実的に考えると厳しいものです。
となると、Fediverse という新天地で新たな繋がりを増やすことが定住のためには大切になります。

これは後述しますが、Mastodon は検索性が弱く、新しく人を見つけにくいという課題もあります。
筆者は現状、フォロイーの Boost (Repost) で回ってきた人で興味が近そうな人をフォローし、またさらに Boost からフォローする、というサイクルになっています。
最初に何人か近しい興味の人をフォローできると、定住のきっかけになりそうだなと感じています。

また、筆者の場合、Mastodon に定住できた理由として「ちょうど自分が移住を開始した時期に Mastodon への移住者が増え、同じ境遇の人がいた」という点が挙げられます。
これによって初動のハードルが下がり、フォロイーを増やすサイクルが生まれたと考えています。
筆者が 2017 年に Mastodon へ移住できなかったのは、ここがネックだったのかなと感じています。

記事執筆時点では、misskey.io が隆盛し、幾分かユーザーを見つけるハードルが下がりました。
misskey.io はユーザーが多いことに加え LTL も活発なため、Fediverse に定住しやすくなっていると感じます。

Mastodon から移住して感じていること

さて、Twitter から Mastodon に移住し、9 ヶ月ほどが経ちました。
そこで感じるのは、Twitter も悪い点ばかりではなく、良い点もある、ということです。
Mastodon は Twitter 全てを代替できるかというと、少なくとも現状においては、そうではありません。

そのため、筆者は Mastodon をメインとして使いつつ、必要に駆られたら Twitter を使う、という運用に落ち着いています。

Mastodon にない Twitter の良さ

まず、Twitter は Mastodon ないしは Fediverse に比べて圧倒的に人が多いです。これはとても大きなメリットだと Mastodon に移住して感じています。
Fediverse 圏内は Twitter と比較するとまだまだ人は多くありません。

人口の差によって、以下のような Twitter の強みがあると考えています。これらは Mastodon が持っていない弱みでもあります。

リアルタイム性が高い

何かが話題になったとき、「話題になっている」ということが即座に知れます。
フォロイー経由でなくても、Twitter でとりあえず検索すれば最新の情報が得られるということは、Twitter の大きな強みです。

Mastodon ないしは Fediverse では、そもそもユーザー数が Twitter に比べると桁違いに少ないということで、リアルタイム性が一歩遅れると感じています。
具体的なエピソードとして、技術カンファレンスに参加した際、Twitter でハッシュタグをつけて参加者が各々実況しているものの、Fediverse 圏内からはそれが全く観測できませんでした。
専用のコミュニティを用意しなくてもハッシュタグでコミュニティに参加できるという点は、Twitter の強みのひとつです。

トレンドを知れる

ここでの「トレンド」は、Twitter のトレンド機能というより、「今話題のもの」を指しています。
リアルタイム性が高いことにも繋がりますが、自分が興味のある分野であれば、フォロイーを経由してタイムラインからトレンドを知れます。
具体的には、例えばソフトウェアエンジニアリングの分野であれば、新しい技術に明るい人をフォローしておくと、自然と今流行っているプログラミング言語だったりライブラリを知るきっかけとなります。

Fediverse の世界でもそういったきっかけはありますが、分野によっては全くないこともあります。
例えば、筆者が嗜んでいるゲームの界隈は Twitter に集結していて、
このように、Twitter は分野を問わず人が多いという点が強みだと感じています。

企業等が運用している公式アカウントが Twitter に多く、Twitter にしかない情報も多い

例えば、原神のイベント等の情報は Twitter (@[email protected]) で公開されています。2

原神だけでなく、Twitter にしか最新の情報がない、あるいは最新の情報にアクセスしやすいことは多々見受けられます。
例えば、「アニメの新作が発表された」「興味のある分野のイベント開催が発表された」といった情報が Twitter にしかないこともあります。

リアルの関係を SNS に持って行きやすい

日本においてはだいたいの人が Twitter アカウントを持っています。
これの何が嬉しいかというと、例えばリアルで新しく人と知り合ったときに、Twitter で一旦繋がる、ということが容易にできます。技術カンファレンスの懇親会などでよく見かける光景です。

容易に繋がれることで、カジュアルに連絡を取りたいときにも便利です。
「メールだと重いし、かといって他の連絡手段も特にない、あるいはそもそも知らない」というケースで、Twitter が特に便利だと感じています。

Mastodon/Fediverse の良さ

ここまで Twitter の利点を書きましたが、Twitter にはない Mastodon の良さもあります。むしろこの良さが、筆者を移住させた理由でもあります。

Twitter は、公共性が高いことによる数多のメリットがあります。
一方 Mastodon は公共性が高いとは、少なくとも現状ではいえません。

これはメリットでもあります。具体的には、「炎上がしにくい」「気軽に発言がしやすい」というメリットがあると考えています。
「拡散されにくい」という意味でもあるため、インフルエンサー的なこともできません。

インフルエンサーとっては不利な一方で、そういった投稿に興味関心がない人にとっては利点でもあります。

例えるなら Twitter のサブアカウントや鍵アカウントのようなもので、ある程度クローズドなコミュニティともいえます。
あるいは、昔の Twitter のような、個々が好きなことを自由に投稿している、牧歌的なコミュニティとも捉えられます。

これこそが、筆者が Mastodon を気に入っている最大の理由です。
Twitter では個人のアカウントに公共性が求められ始め、発言へのハードルも高くなっていて、自然と発言を避けるようになっていました。
Mastodon ではそのハードルがなく、自由に発言できる雰囲気がとても気に入っています。

ただ、これらのメリットは、人が増えてくると失われるものだとも考えています。
Fediverse が普及して盛り上がってほしいという気持ちもあり、難しい課題だと感じています。

Mastodon/Fediverse の課題

Mastodon には、「人がまだ多くない」という課題はありつつ、それはメリットでもある、といったことを書きました。

それ以外にも、個人的に普及の妨げになる致命的な課題として、検索性の悪さが挙げられると考えています。
Fediverse は分散型という特徴から、投稿やユーザーを検索することが困難です。
未知の情報を知ることができず、新しい繋がりや発見を非常に見つけにくいと感じています。

Mastodon では 4.2 で検索ができるようになりました。
しかし、検索元のサーバーが知っている情報しか検索できない、つまり連合している情報のみに検索範囲が絞られます。
具体的には、例えば misskey.io に A というユーザーがいて、mstdn.jp のユーザーは誰もそのユーザーをフォローしていないとすると、A のユーザーの情報は検索できません。
筆者はおひとり様サーバーがメインの活動拠点であり、検索可能な情報はフォロイーの情報とほぼ同等になります。この点がとても不便に感じています。

大きいサーバーに属せばこの課題はある程度解決されるものですが、非中央集権的なコミュニティでありながら、利便性を求めると結局全員が同じサーバーに属す方が良いというのは、なんともむず痒い気持ちです。

結局 Mastodon と Twitter どちらが良いのか

現状の筆者の考えとしては、「どちらも併用する」というのが最適解だと考えています。
両者に善し悪しはあるため、それぞれの特性を活かす使い方をするのが理想的です。

参考までに、筆者は以下のように使い分けています。

  • Mastodon
    • メインの活動拠点 (日常的な投稿など)
  • Twitter
    • 広報目的
    • 公的な情報の閲覧
    • リアルタイムな情報の検索

最後に

Twitter から Mastodon に移住して感じている、両者のメリット・デメリットについて書きました。
Twitter にはつい私情を挟みたくなりますが、うまく付き合っていくことが大事だろうと考えているので、頭を冷やしながら書きました。

この記事がなにかの助けになれば幸いです。


この記事は Fediverse (2) Advent Calendar 2023 の 2 日目の記事です。
明日の記事は サユリ🇺🇸Miami さんが予定されています。

また、Fediverse (4) Advent Calendar 2023 の 19 日目 も予定しています。
おひとり様 Mastodon サーバーを支える技術について書く予定です。

Footnotes

  1. もちろん、Twitter が X に改名されたり、impression 稼ぎツイートが散見されるようになったり、というサービスの質の低下に対して感じるところはあります。しかし、そもそもそれらはサードパーティークライアント締め出し以降の出来事で、すでに移住していたので、移住の理由としては挙げていません。

  2. HoYoLAB でも公開はされていますが、普段利用しない SNS なので書いていません。